森田童子

2018/09/07
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 高校時代だったろうか、森田童子というひとを知った。 
カーリーヘアにサングラス。まずは性別がわからなかった。 

 声はちょっとガーリーで、たぶん女だろう、そのくらいの認識。 
わたしは、レコードを買って、ひとりで夜、よく聴いたものだ。 

 まだなんだかわからない夢を抱きつつ、学生運動も下火になっていった時代、 
わたしは、なにかを求めていたはずだ。 

 だから、古井戸とか、高田真樹子を聴いた。龍と薫もいた。 
そのひとりに森田童子も。「さよならぼくのともだち」という歌はよかった。 
学生運動で死んだ子の歌らしい。 

 だれひとり、森田童子を知る者がいなかった。 

それが、脚本家の野島伸司というひとが、 
高校時代同級生に誘われてライブハウスで 
歌う彼女を知り強い印象を受けたらしく、 
それが、「高校教師」の主題歌となり、人口にカイシャすることになる。 


 しかし、あの歌詞がいまだによくわからない。 


  ♪春のこもれ陽のなかできみのやさしさに 
  うもれていたぼくは弱虫だったんだよね 


 この「きみ」は女性である。童子は女性だが、一人称は「ぼく」なので、 
そういう設定なのだろう。彼女の作品は「ぼく」が多用される。 

 つまり、甘えすぎた「ぼく」がいた、ま、そういうことだ。 

 ♪きみと話つかれていつか黙りこんだ 
 ストーブ代わりの電熱器、赤く燃えていた 


 これは、どうも同棲しているような含み。それも貧乏。 
 そこまではよい。 


 ♪ぼくがひとりになった部屋にきみの好きなチャーリーパーカー 
  みつけたよ。ぼくを忘れたカナ 

 このへんから事情がややこしくなる。 

 たぶん、この「きみ」とは別れたのだろう。「きみの好きなチャーリーパーカー」は 
だれのものだ。きみのものか。なら、この貧乏くさい部屋を出て行く時に、 
好きなチャーリーパーカーを置いていった、ということだろうか。 

 それほど、急激な別れがこの二人に訪れたのだろうか。 

 「ぼくを忘れたカナ」 

 やめてくれよ、そんな言い方って、、ね。 


 ♪だめになったぼくをみてきみもびっくりしただろう 
 あの子はまだ元気かい 昔のはなしだね 


 ということは、だめになっていった事後的なことを「きみ」は 
目撃したということになる。どこかで遭ったということなのか、わからない。 
ところで「あの子」ってだれだ。男か、女か。 
 それも「あの子」というのは「昔の」ことだから、 
同棲した時代にいた「あの子」のはずだ。彼女のともだちだろうか。 

 これもよくわからないのだ。 

そもそも、森田童子という芸名は、本名もわからないまま、 
1983年、芸能界から去っていった。すべてが「謎」なのである。 

 高校時代、森田童子はわたしのものであった(はずだ)。 
それが、1993年のあの「高校教師」というドラマで脚光をあび、 
一躍、有名な歌となった。 

 ほとんど無名な歌手だったが、 
それこそ、ご本人「きみもびっくりしただろう」である。 

 たしかに、神田川と、どこかに共有するアンニュイで退廃的、 
70年代のわかものの、 
いわゆる「三ない主義」の潮流の作品であったことはまちがいない。 

 学生運動も、その無意味性に学生じしんが気づきはじめ、 
「いったいおれたちは、なにをしているのだろう」と、そんな 
空気が世の中にあったころだった。 

  
 そして、なによりこの歌のタイトルがなんとも言えないのだ。 

「ぼくたちの失敗」 

 わからないことだらけである。

しかし、2018年4月24日心不全のため自宅で死去。65歳だったという。

 音楽活動休止後は主婦として暮らしていたが、

体調を崩して2017年から入退院を繰り返し、

退院後間もなくして逝去したという。