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モラルハザードという言葉が、
そろそろ死語になってきたような気がする。
道徳の低下である。
モラルハザードは、もともと不動産関係の語彙であったのが、
一般化したものである。
それよりも、いまでは、デュルケームの「アノミー」が、
人口にカイシャしているかもしれない。
ついこのあいだ、北海道でのこと。
顔に障害をもつ16歳の子をこっそり写メして、
それをツィッターにあげた17歳の女子高生がいた。
「笑いとまんない 死ぬ」とあったそうだ。
この悲劇は、16歳の子の母がそれを見つけ、
警察に被害届けを出し発覚、侮辱罪で起訴された。
これは、アノミー状態を通り越して、
感情の劣化とでもいってよい事況である。
しかし、「笑いとまんない、死ぬ」とつぶやいた、
その向こう側に
「やめなさいよ、あんた」というセリフがなかったことが、
もっとおそろしいことなのだ。
SNSという媒体は、どれをとっても「顔」がない。
そういう、まだ法整備が整っていないところの、
「顔のない集まり」 で、このような感情劣化がおこっている、
という荒涼とした現況がある。
で、もし「顔のない集まり」にひとりでも正義感から、
「よしたまえ」という正しいひとことを発しようものなら、
いっしゅんにして、ノケモノにされてしまうのだろう。
正義は異分子として処理されてしまうのだ。
だから、それについては見て見ぬふり、知らんぷりをする。
こういう事況を、認知的斉合性とよぶ。
じぶんだけが、村八分になることを無意識におそれるのである。
宮台信二氏なら、それを「妄想のホメオスタシス」とよぶのだろう。
じっさい、SNSという媒体における法インフラもさることながら、
その現象すら、いたちごっこで後追いしているにすぎないのである。
事後的に問題を解決するようなしかたでしか、
社会や政治は動かないのである。
ジョン・ロールズ(1921-2002)は、
正義論で有名な哲学者だが、
君がわたしでもそれに耐えうるか、君がわたしでも同じ行動をとったか、
それを考えろ、と主張する。これを「無知のベール」と呼ぶのだが、
立場の入れ替えの可能性が公平・正義をうむという。
相手の立場になれ、なんてだれでも、
「さわやか三組」で教わることなのだろうが、
そんな、あたりまえのことができなくなっている。
おなじく、リチャードローティー(1931-2007)というひとも、
感情劣化に対しては、憤ることが肝要だと述べている。
もうすでに、この世の中に「知性」の教育を施すことが
大事ではなくなっている。
それよりも「感情の教育」、
センチメンタル・エデュケーションこそが、生存条件であると
主張する。
つまり、いけないことには、
ひとは声を大にして怒っていいのである。
怒れ! やろうども。
「笑いが止まらない、死ぬ? なんだと、じゃあ・・・・」
このあとのセリフを言うと、わたしの感情劣化がバレてしまう。