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なぜ、落選したのか。
それも、50人定員の議席で51位。
その差、わずかに48票差。
学校でいえば、一クラス分の票が
得られなかったのである。
矛盾論という考量がある。
なにかの失敗は、従属矛盾であり、その従属矛盾は、
ある主要矛盾を解決しなくては、
解決されさないという考えである。
毛沢東の言説である。
落選、それは従属矛盾である。
では、その主要矛盾はなんなのか。
この話はある区のできごとで、
これから述べることすべてが事実かわからないし、
仄聞することのまとめだから、
信憑性にかけることはまぬがれない。
どこまでも憶測であることを付記する。
ある区議会議員、それも議長をされていた方が、
体調を理由に、今期で引退ということになった。
議長をするだけで、給与が30万円アップするらしいから、
それはおいしい話であるとおもうが。
で、その地域の神社の氏子会なのか、
数名で、数年前から、引退する議員にかわって
この地域から、だれを選出するか、
鹿ヶ谷の陰謀、あるいは、
枢密院よろしく話し会いが営まれた。
そこで名を挙げられたのがT氏である。
かれは、都議の秘書の経験もあり、
政治にはすこぶるくわしいのだが、
この地域との密接さには
いささか欠けていた。だから、この話が
隠密裏にきまってから、この地域の
すべての町会長にあいさつ回りをし、
地盤を堅固なものにし、
そして、T氏は、わざわざ
地元小学校のすぐ裏手に引っ越し、
万事、用意万端であった、はずだった。
はずだったが、そこにアクシデントが起こった。
辞めるはずの議員が、もう一期するというのである。
その理由は、はっきりわからないが、
ウワサでは、区長選挙に、現職の区長の4選がかかっており、
4選するには、区の条例を変えねばならない。
そのため、懇意にしていた、いまの議長を
旗頭に、条例の変更をもとめたのである。
つまり「辞めるのやめた」
というお粗末なはなしなのだ。
だから、T氏の驚き、あるいは怒りは
想像に難くない。
そういうわけだから、地元では、
「辞めるのやめた」人になぞ
一票を投じまいという声が広がっていったのだ。
かなりT氏への同情が集まったのだが、
しかし、T氏にも「落ち度」があったのだ。
もともとの話ではあるが、T氏選出の場に、
駅向こうの、ふたりの商店街理事長や、
おなじく駅向こうの町会長に、お声掛けがなかったのだ。
つまり、駅向こうのお歴々は、
寝耳に水、事後報告というカタチでT氏を
向かい入れる格好になったのだ。
議員には、地盤、看板、カバンがいるという。
じつは、この堅固にみえた地盤がすでに、
液状化をおこしていたのである。
駅向こうのある町会長は、鹿ケ谷の会議に
参加できていないことにすねたのか、
とにかく、「辞めるのやめた」人に加担したのだ。
「ぜひ、かれに一票を」と、電話攻勢まで
町会長御自らするしまつである。
だが、もっぱらの下馬評は、T氏有利、
あるいは、ふたりとも落選ではないかと
いうことであった。
駅前では、「辞めるのやめた」人の応援に
偉い人なのだろうか、「議長になったひとを
落とすということは、地域の恥です」と、
大音声あげ演説していた。
そして、当の本人は、にやにやしながら
ご自身のパンフレットを配っていた。
だから、わたしはついご本人の前で
「本人よりも熱がこもってますね」とか、
軽口をたたいてしまった。
「辞めるのやめた」人の奥方も
けなげなひとで、毎日、駅前の500円弁当を
4.5個買って、選挙事務所で食事をしていたという。
「ここのが、安くておいしくて」と。
だから、ここの弁当屋の主人も、そのけなげさに
ほだされてか、T氏から鞍替えしたはずである。
また、T氏の取り巻きも
すこし胡散臭い面もあったようだ。
が、これは、わたしの実感ではない。
あるひとの感想である。
T氏をつよく推す地域の町会長は、
会計も回覧板も一家、一族で運営していて、
役員たちの、バス旅行や宴会など、
会費は1000円、あとは町会費でまかなうらしい。
だれが、みても、おもっても、会費集めて
「やりたい放題」なのである。
しかし、これは確かめたわけではないから、
ガセかもしれない。
が、それをおもしろくないとおもっている
人びとが、この地域のまわりに大勢いることは
まちがいない。
ようするに、はっきりわかっていることは、
それをおもしろくないとおもっている
人びとは、T氏には入れなかったということだ。
だれが応援をするか、というメンバー構成を
間違えるととんでもない、しっぺ返しをくらう、
ということだろう。
小泉今日子に「虹が消えるまで」という
ナンバーがある。
途中に、
「この世界がゆっくり教えてくれた、
たいせつなのははじまりなんだって」
というくだりがある。
わたしは、この歌が好きで、じぶんでも
ギターで弾くのだが、
ほんとうに、はじまりがたいせつなのか、
じつに疑わしかったが、今回の
区議選でわかったことは、
「はじまりがたいせつ」ということであった。
みなさんで、決める、たったそれだけのことを
しないだけで、48票が消えていったのだ。
進化生物学の正しさとは、どれだけ多くの
ひとを守れるかという心の働きを評価する
ことが起源となっているのだが、
こういうかんがえをトクヴィリズムといい、
こういう考量が「地盤」を堅固なものにするのである。
T氏選出の、その場に、かれは隣席していたのか、
いないのか、それは知らないけれども、
「わたしを出馬させてくださるなら、
すべての氏子会、あるいは、お歴々のうちで、
相談されるようおねがいします」と、申し出ていれば、
こういう結果にはならなかったはずである。
先が読めていなかったのか、
この地域の風土を知悉していなかったのか、
とにかく、地盤がくずれてしまったことに
今回の主要矛盾が存在する。
で、はたして「辞めるのやめた」人はみごと当選、
今期もまた議員として議会に出てゆくのである。